035月十窯 片岡哲さん
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月十窯ギャラリー。

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土をこね、ろくろを挽く。

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深い色合いの豆皿。

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ときどきこんな人形を作ります。

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味わい深い仕上がりの器。

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香炉から立ちのぼるひとすじの煙。心が落ちつきます。

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柔らかい語りが印象的な片岡哲さん。

月十窯 片岡哲さん

緑の中の陶房&ギャラリー「月十窯」

郡山市郊外、郡山湖南線を猪苗代方面に向かう道路沿いに「月十窯(げっとがま)」という小さな陶房&ギャラリーがある。近くには公園が点在し、豊かな緑の風景が広がる。
陶芸家の片岡哲(かたおかさとし)さんがこの地に月十窯を開いたのは、1997年初秋の頃。今年で11年目を迎える。
「それまで長いあいだ都会で暮らしていたので、この土地の自然の美しさには心が癒されました」
一緒に出迎えてくれた奥さまの容子さんが、笑顔で話してくれた。
「私が福島県出身で縁あってここに陶房を開きました。越してきたのは10月。月がとてもきれいで、二人でずっと夜空を見上げていましたね」
月十窯という名前には、そのときの思いも込められているという。
「月という文字を入れたかったのです。英語のGETや驚きのイメージのゲットという音が先に決まり、月と十をあてたのです」
側で片岡さんが、「月に10日だけ働く暮らしがしたい、ということではありませんよ」と笑った。

学生時代の思い出

片岡さんは、1953年京都に生まれる。小さい頃から絵を描くことが好きだった。
「絵は今でも描いています」という片岡さんは、独特の作風を持つ仏教彫刻家「円空」の世界に惹かれるという。ギャラリーの入り口と陶房には片岡さんの描いた絵が掛けてある。生命力のある躍動感にあふれる絵だ。
陶芸家を志したのは、兵庫県芦屋市の滴翠 (てきすい)美術館付属陶芸研究所専攻科に入学してからだという。
学校に寝泊まりしながら作品を作り続けたり、夕方から夜にかけて裏山に行ったり。ジャンケンで負けたものが一輪車でビールなどを買ってきて焼肉をしたり。自由な校風の中、のびのびと学ぶことができたと片岡さんはなつかしそうに話してくれた。

内側からフワッと膨らますように。
好きな色は緑、青。

片岡さんは学校を卒業後、東京は新宿の角筈窯(つのはずよう) で20年間、器やお茶の道具を中心に作陶活動に打ち込む。その間、都内の百貨店やギャラリー等で個展を開催する。
「ここに来てからは、地元の土と岐阜産の白い土を混ぜて作っています。陶器に色をつけるうわぐすりは、もみがらや木の灰などで作ります」自然のものを使うのでなかなか一定しないのだという。
「色は単純な方がいい。焼き上がったものが毎回いつもいいとは限らないし、予想外の色が出ることもある。そんなところがおもしろいですね。好きな色は緑、青。織部の魅力は緑や青の奥の深さにあります」
デッサンはしない。
「形を決めると、とらわれてしまうので大まかに作っていく。あとで何かをこれに合わせて付け加えていくという風に。形を作るのは早い。土が柔らかくみずみずしい時に形を作る。内側からフワッと膨らますように。アドリブも大切です」と穏やかな語りで一気に話してくれた。
時々人形を作る。小さいが力強さが感じられ、片岡さんが描く絵に似ている。その気になった時にパパパッと一気に作りあげるという。
器にふたをかぶせたり、素材をつなぐ工程も結構楽しい、と笑った。

花と暮らしの器展にて

7月の始めに開かれた「花と暮らしの器展」を訪れた。
容子さんが始めてプロデュースした個展で、本格的な香原料を使って匂い袋を作るという企画を取り入れて開かれた。
風情ある古民家ギャラリーの玄関をくぐると、落ちついた香のかおりが漂う。手のひらにのる小さな花入れ、緑や青の美しい角皿、菓子皿、独創的な形と配色のカップ、香炉など数多く展示されている。畳に座りこみ落ちついて手にとれるのが嬉しい。
丸みのある茄子の形をした小鉢がいくつか目にとまった。ひとつひとつ微妙に違う色合い。目の高さにかざして眺めたり、少し遠くに置いて見たり。手の中に包みこめばふっくらとあたたかい。なによりも深い藍色に魅せられた。
この器に何を入れようかあれこれ思いをめぐらせる。
片岡さんの柔らかくまろやかな声が聴こえてくるような器だ。kマーク

月十窯
〒963-0213 郡山市逢瀬町多田野字新池下25-1
TEL.024-957-3970