037金山忍さん
ろくろ

窓からの風を受け、ろくろを挽く忍さん。

だんご人間

「やあ」。窓辺に座るだんご人間。

さあ何

この動物は、さあ何でしょう。

工房へ

工房へ続く坂道の途中で。後方には、窯があります。

カップ

マグカップいろいろ。持ち手がしっくりと馴じみます。

ポット

個性が光るティーポット。
このふくらみは風船から型をとりました」。

金山忍さん。

金山忍さん。
「窯に入ると人が変わると言われる。炎を見ていると2日間、寝ないでも平気です。一番集中する時ですね」

陶芸家 金山忍さん

「金山忍 陶展」を訪れて

6月の終わりに福島市の風花画廊で開かれた「金山忍 陶展」を訪れる。雨の降りしきる日だった。
ギャラリーに足を踏み入れると静寂な空気に包まれる。心地よい緊張感の中、少しだけ息をひそめて展示会場を見渡す。
コロリとした人の形をしたものが、まるでかくれんぼをしているように、ここにもあんなところにもひっそりと佇んでいる。
両手をかかげバンザイをしているもの、すっくと立ち上がり遠くを眺めているもの、腕まくらをして寝そべっているもの。窓辺に腰をおろし片手をひょいとあげている姿からは、やあっと小さな声が聴こえるようだ。
まるい身体の動物もあちこちにいる。シンプルでどこか愛嬌があってかわいらしい。
使いやすそうな形の美しいマグカップに目がとまった。手に取ってよく見ると目と鼻と口がついている。その目鼻立ちはスッキリとしており、可愛いだけではないセンスの良さが感じられる。
気がつけばいつのまにか穏やかに流れている空気の中に、訪れる人々の低く柔らかな話し声が溶け込んでいく。

人に見てもらうことの大切さ

「あのコロコロとしたものは、だんご人間といいます。展示会に来てくれた子どもたちがそう呼んでくれたんですよ」
嬉しそうに話す陶芸家の金山忍(かなやましのぶ)さんは、笑顔が印象的な女性だ。会う人の気持にスッと寄り添うように微笑みかける。
「その子たちが、あ、うちのお父さんだ、ってとても幸せそうに笑ったのです。身近に感じてくれたのが嬉しかったですね」
だんご人間が生まれたのは5年前。手のおき具合や足の開きかたで、なんとなく男の人、女の人を表現しているのだという。
母体をたくさん作って1個づつ遊んでいく。すると動きのあるだんご人間になっていく。
「自分が楽しんで作ったものをおもしろがってくれる人がいる。そのことは自分にとっても励みになり、新たな楽しみにも繋がります。人に見てもらうことの大切さに気づきましたね」
忍さんの最近のテーマは、楽しんで作ることだと話してくれた。

風の通る蔵造りの工房で

竹林を背に蔵作りの工房がある。中に入るとひんやりとした空気に包まれる。静かだ。聴こえるのは鳥の声、振り子時計の時を刻む音。棚には黒陶の躍動感のあるオブジェや器、幾体ものだんご人間が置かれている。
吹き抜けの高い天井を見上げると2階のスペースに居心地のいい空間があり、木のテーブルと椅子が置かれている。
白い布地のカーテンが窓からの風に揺れる。その前で忍さんは土をこねる。ろくろを挽く。たったひとり、自分と向き合う場所だ。
「アフリカの土器が好き。部族の人々が作るオブジェやお面に強く惹かれます」美大生の頃から虜になったという。
重厚な黒陶、土っぽさが素朴な焼きしめ、繊細な磁器。この3通りを作りわける。土は信楽と益子のものを使う。
「冬だけは磁器ものを作ります。土が着かないように工房を拭き掃除してきれいにしてから始めるんですよ」こういうところはきちんとしているのです、と笑った。

小さい頃、よく母について器を見にいきました

忍さんは郡山市出身。工房の隣にある自宅に家族と暮らしている。
「父の退職を機に家族でこの三春の地に移り住みました。私の陶芸活動を全面的に応援してくれている両親には感謝しています」
忍さんは、お母さまの顔をじっとみつめながら話す。
以前から器や古い道具などを集めているというお母さま。
「私はこの子が作るものが好きです。カップも取手のところが持ちやすく手にしっくりとなじみます。普段使いの器もシンプルで使いやすいですね」
娘を信頼し見守る目からは、静かな覚悟のような思いを感じる。柔らかな強さを持った素敵な女性だ。
忍さんは小さい頃から、そんなお母さまにくっついてよく器を見にいったという。
「天真爛漫な性格だと言われます。のっているときには夜中まで工房にこもったり、やらない時には1週間位本を読んでいたり」
そんな自分をおもしろがっているような忍さんだ。kマーク

金山忍
〒963-7732 田村郡三春町上舞木字大峯114
TEL・FAX/024-944-0378