039杉山隆彦さん
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杉山隆彦さん。

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「トランペットは大好きです」

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一枚一枚に点字が施されている名刺。

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杉山さんと奥さまの正子さん。
笑顔が素敵なお二人です。

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衣装変えも楽しいゴジラくん。
十字屋のマスコットです。

杉山隆彦さん

小さい頃から楽器はいつも触れるところにありました

青いエプロンを掛け、笑顔を絶やさずにお客さんと話をしたり店内を動きまわる姿を見て、なんて楽しそうに仕事をする人だろう、そう思った。
杉山隆彦さん、十字屋楽器店の社長さんだ。
「自分は2代目です。小さい頃から楽器はいつも触れるところにありました」両親は、触ってはダメなどとは決して言わず、何でも自由にやりたいものをやらせてくれた。5歳の時にはヴァイオリンの演奏で新聞に載ったこともある。その後、中学校で吹奏部に入り、トランペットに夢中になった。
「よくトランペット磨きをしていましたね。夜中に近くのビルの屋上で、夜空のトランペットを吹いたりして。怒られましたけどね」と笑う杉山さんだ。
「若い頃は、友だちとバンドを組んでね、楽器は何でもやりました。キーボード、ベースギター、ドラム。レコードを聴きながら見よう見まねで練習するんですよ。ギターなんか、下敷きの角を三角に切ってねピックにしたり。このビルの屋上でコンサートをしたこともあったなあ」
音楽や楽器は生活の一部だという杉山さん。ここ一年半ぐらい「二胡」の魅力にとり憑かれているんですよ、と嬉しそうに笑った。

音楽とは、音を楽しむこと

もうだいぶ前のことですが、と杉山さんが話をしてくれた。
「目の不自由なマッサージの先生に、音響機材のミキサーが欲しいと言われました。自宅の2階に置いて音楽を楽しみたいというのです。目が見えなくてもミキサーが使えるのか私自身、不安でしたが先生の熱心さ、なによりも明るくて真面目な人柄に心をうたれ私もがんばってみようと思ったのです。ミキサーのツマミを指で触れながら音の変化を伝えたり、配線のしかたなどひとつひとつ使用方法を話し終えたあとは、二人ともクタクタでしたね。
一息いれようと夕方、コタツに入りながら日本語っていいですねと話をされたときのことです。
点字はカタカナなんですね。だから漢字は使わないし解らない。ある人に漢字というものを教えてもらったんですよという。スウガクは数を学ぶと書いて数学。ではオンガクは音を学ぶと書くのかと聞いたら、いや音を楽しむと書くって言われて感動したっていうんです。
いいねえ、あなたの仕事は。楽しい器を売っている店なんだね。そうと言われてハッとしました。気付かないことがたくさんあって話を聞きながら涙が出てきました」
先生は今も、ミキサーを上手に操作して音楽を楽しんでいるという。杉山さんは、指で触るだけで読める「点字」を先生に教わり、県盲人協会の文化祭等の手伝いにもでかけていく。
杉山さんの名刺には、点字が施されている。似顔絵のさわやかな笑顔が印象に残る思いのこもった名刺だ。

安心して楽器を楽しんでほしい

十字屋楽器店は、社長の杉山さんと奥さんの正子さん、息子さんの晃一さんとリペアーマンの滝沢さん、4人で日々を送る音楽の応援団だ。楽器の販売をするだけでなく、音楽をする人のためにあらゆるサポートをしている。
「そのひとつは目の前で楽器を治す、自分たちは楽器のお医者さんであることを自覚しています。調整、修理はまかせてよ。十字屋がついているから安心して楽器を楽しんでよ。そんなサポーターでありたいですね」
演奏者に気持良く演奏してもらうのが基本。他店で買った楽器の修理も受ける。
「リペアーマンの滝沢は以前、トロンボーンを吹いていたんですよ。あるときトロンボーンの修理依頼がきて治すのに4日かかると判断。トロンボーンを4日吹けない人の気持をずっと考えながら修理したといいます」
弦楽器のリペアーは杉山さん、管楽器は滝沢さんが担当。運がいいとその様子を目の前で見ることもできる。
「音楽で人生が楽しくなることを一人でも多くの人に知ってほしい。音楽が世界を変える、これからもそう信じ願っています」
笑顔をくずさず、きっぱりと言い切る杉山さんに拍手を送りたい。kマーク