045市川滋さん
市川滋さん

市川滋さん。
花も物も主張しないさりげないものに心が動かされます。

桜

桜の花は一年の中で5日間が見頃。あとの360日があるからこその美しさだと思う。自分はその360日の部分に惹かれる。目には見えない部分「光と影」の影に価値を感じるという。

水仙

自然はよく見るとその日その日で表情が違う。
何気ない変化に心が動く。

市川滋さん

チューリップより水仙が好き。
チューリップが嫌いというわけではないですよ。
春先に芽をみつけると、おー、また出てきたかと思う。

春待つ庭

春待つ庭。

野球少年

中学時代は野球少年。
「高校生の頃、ラジオの深夜放送に夢中になってね。その番組の本が出て買ったんですよ。物はとっておいたりしない方なんですが、これだけはずっと持ってるんです」

市川滋さん 「三春ハーブ花ガーデン」

冬の風景には、他の季節にはない心動くものがある

「ドキドキするのは、早春です。緑のないところにある日、ほんの小さな芽が出ている。そういうのを見ると嬉しくてワクワクしますね」
市川滋さんは、穏やかな眼差しで冬の窓の外を見ながらそんなふうに語りはじめた。
「ここを訪れた方に、見頃な時期はいつですかと聞かれます。花が咲き誇る季節はもちろん喜ばれますし、一番のおすすめです。自分はね、冬枯れの今の季節にも心が惹かれる。この辺を歩くと枯れ木にとまる野鳥が鮮明に見えるんですよ。木の実をついばみにくるんですね」
葉が落ちて視界が広くなり、それまで見えなかったものに気づくという。冬の木立、モノトーンの風景の中に鳥たちの羽の色が溶け込んでいく。
「冬の庭は、見た目には休眠している状態ですが、植物は眠っているわけではない。土の下で根っこが成長している時期なのです。足の下では生命が躍動しているんですね。目には見えないけれど一生懸命生きている」冬の風景には、他の季節にはない心動くものがあると市川さんは言う。
三春ハーブ花ガーデンは、三春ハーブガーデンとして1992年にオープン。市川滋さんは、オープンスタッフとして入社し尽力をつくした。現在は、ショップスタッフとして春の園芸シーズンに向かい、スタッフと共に忙しい日々を送る。

ハーブとの出会いは衝撃的でした

植物に近づくことは、自分にとって逃避だったかもしれない。そう市川さんは言う。
「以前、勤めていた会社で毎日を過ごすことに心をすり減らしていた時期がありました」植物に確かなものを感じていたわけではない。けれどなんとなく頼る気持ちがあって園芸店や花屋さんに出向いたり、本で調べたりして植物を育てていた。
「その前には、家族で裏磐梯でペンションを経営していたこともあって暇さえあれば山登りをしたり、高山植物を写真に撮ったりしていました」その時の自然や植物への思いが、胸の中に息づいていたのかもしれない。悶々とした日々の中で、すがるように植物へと心が動いていったという。
「ハーブ園ができるらしい、という噂が耳に入ったのはちょうどそんな時でした。ハーブって何だろう、すぐに心が向きましたね。もう押しかけるようにして働くようになって。38歳の時でした」
当時のスタッフもほとんどがゼロからの出発。全てが未知の世界で、興味も次から次とわいてくる。ひとつひとつ勉強し着実に吸収していくうちに、植物への思いが大きく広がっていった。
「数年経って、本質的な部分がわかってくると別の面白みを感じるようになりましたね。ハーブとの出会いは自分にとって衝撃的でした。知らないことを知っていくことのおもしろさは心を前向きにするんですね。実は、はじめて自らやろう、と思えた仕事なのです」
あの頃は、家に帰ると晩酌をしながらも植物の本を読んでいたと市川さんは笑う。

お客さまがお帰りになるとき
「楽しかった、また来ようね」と言われるのが嬉しい
ここで働いている人が明るく元気な職場でありたい

「ハーブは、香りのある不思議な力を持った植物です。愛でる、香る、食べることができるハーブは、心を豊かにしてくれる。こういう世の中だからこそ求められているもの。主役ではなく名脇役、生活の中に溶け込みいいパートナーになれる存在だと思います。種をまいて育てて一緒に過ごしてほしいですね」
ハーブはもともと野生の植物なので、あまり手をかけなくてもたくましく育つ。生命力が強く、こぼれた種で翌年も芽を出すことがあるという。
「お茶をご一緒にいかがですか」フレッシュハーブティーをすすめられた。摘みたてのハーブをティーサーバーに入れ熱いお湯を注ぐ。待つこと数分。透きとおるグリーンの色が美しい。爽やかなミントの香りに思わず目を閉じた。
「普段は、ハーブティーを飲むことは少ないんですよ」そういいながら市川さんも笑顔になる。
「ここ数年は、庭の管理をしながら少し離れた意識で植物を見つめる時間をたくさん持てました。創造する喜びを味わいながら、庭のデザインも手がけています。サラリーマンの世界と一緒でぶつかる壁は同じようにある。けれどここにはそれを上まる素晴らしいものがあります。庭にいると植物がさり気なく力を分けてくれるんですね」
緑の中にしゃがみこんで草むしりをしたり、手入れをしたりするのが自分の性に合っていると笑う。
「今やっている仕事はショップで物を販売する小売業ですが、広い意味でサービス業だと思っています。人と人の繋がりはかけがえのないものです。お客さまがお帰りになるとき、楽しかった、また来ようねと言われるように、ここで働いている人が明るく元気な職場でありたい。働いている人が楽しんでいるところへおいでいただく。そういう場所にしていきたいですね」
市川さんは静かな笑顔でそう話してくれた。kマーク

三春ハーブ花ガーデン
福島県田村郡三春町大字斎藤字仁井道126
TEL.024-942-1138
FAX.024-942-3031