046ガーデンデザイン森の風
菊地徹さんと裕美さん

菊地徹さんと裕美さん。「歌のサークルで知り合いました。世話好きで気配りの人です。トマトソースのパスタをよく作ってくれます。おいしいですよ」と裕美さん。

設計図

裕美さんの描いた庭の設計図。
見ているだけで心打たれるものがある。

好きな花

「花はどれも好きです。なかでも日本の野草がいいですね」と裕美さん。徹さんの好きな花は、寒い中にがんばって咲く春先の小さな花。

生命

越冬する生命

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菊地徹さん、裕美さんご夫妻
「ガーデンデザイン森の風」

めぐる生命、季節の庭

春まだ遠い1月の終わりに、菊地徹さん、裕美さんご夫妻の家を訪ねた。小高い土地にある菊地家のキッチンから見える景色に心が落ちつく。窓の外に広がる冬木立の風景は、一枚の静かなモノクロ写真のようだ。
光が差しこむ南側の窓辺に立つと庭が見える。陽あたりの良い広い庭は一年を通し、思いのこもった草花がそれぞれの季節の風景を描いていく。
「春先のまだ肌寒い日に、落ち葉や枯れ草の間から小さな芽が出ているのを見つけた時がいちばんうれしいですね」
冬枯れの庭を歩きながら、ご主人の徹さんは穏やかなまなざしで足元をみつめた。花々が咲きそろう季節には、近所の方にも庭を開放し、楽しんで見てもらうという。
「あれは、私の父が作った巣箱なんですよ」裕美さんが一本の木を見上げながらそう言った。葉の落ちた木々の間に巣箱が掛けられている。鳥があの中に入ったところを見た事はないですが、とニッコリ笑った。手作りの古い巣箱が置かれているだけで木の枝々にぬくもりが宿り、冬晴れの青い空にしっくりと馴じんで見えた。
「ガーデンデザイン森の風」は、1997年に設立。庭づくり全般と植物に携わる仕事をしている。2007年には、長女の直美さんがカフェとガーデン雑貨の店「morinokaze」をオープンするのに伴い、同じ場所に事務所を置いている。

生活があってこその庭
人の生活の延長に庭づくりがある

裕美さんの描いた庭の設計図には、見ているだけで心打たれるものがある。樹木や草花のひとつひとつが繊細なタッチで描かれ、それぞれの植物の名前が書きこまれている。何故その場所にこの樹木を置くかなども語りかけるような言葉で添えてある。樹木の緑、花や土の色使いもやわらかく、ひとつの物語の挿絵のようだ。
「お客さまと接する時間を多くとり、漠然とした要望を具体的なものにしていきます。家具や着ている洋服などから、その方の中に潜在しているものをイメージしながら引き出していきます」
その上でお客さまの希望や夢を整理したものを具体的に平面図に描いていく。真っ白な一枚の紙に向かい、ひとつひとつ思いを表現し形にしていく心躍る大切な時間だ。
「出来上がった設計図を見ていただき充分に語り合った後に、その思いを職人さんにいかに伝えていくか、それが私たちの仕事です」
生活があってこその庭。人の生活の延長に庭づくりがあるという。ひとつとして同じ庭はない。どうやって心地良いものにしていくか、人のために自分のできることは何かをいつも考えています。そう裕美さんはいう。

「やりたいのなら、やればいい」
背中を押してくれた徹さんの言葉

子どもの頃に父親に連れられて里山を歩いたことが原風景にあるという裕美さんは、植物が大好きな少女だった。
「父に山歩きの楽しさを、木や草花を通して教えてもらいました。よく一人でも山で遊んでいましたね」
自然に身を置きその中で育まれていく感性を抱えながら、大きくなったら絵を描く仕事をしたいと思うようになる。イラストレーターへの夢を胸に秘めながら、やがて裕美さんは会社勤めをするようになる。その後、徹さんと出会い結婚をし、子どもが生まれてからも共働きの日々を送った。
忙しい毎日の中で、植物に接する時間がその頃の裕美さんを支えていたという。いつしか裕美さんは、自分のように生きる力を潜在的に花や木や庭に求めている人がたくさんいるのではないかと思うようになり、園芸療法に心が向いていく。
やがて、自分が心に描くような庭は誰が作ってくれるのだろう、誰にも頼めない、それは自分にできないだろうか、そんな気持ちが芽生えていく。
「それが庭づくりをしていこうと思った始まりでした。森の中を歩いていると樹や小さな花に、木々を往き交う鳥に愛を感じます。自分は森の中を吹き渡る風になってそれを伝えたい、そう思いました」この道しかないという直感のようなものだったという。
そんな思いを抱えて過ごす裕美さんにある日、徹さんが言った。
「やりたいのなら、やればいい」徹さんの言葉が背中を押した。
仕事を続けながら、週末に上京し学校に通う2年間の日々。家族の支えと徹さんの覚悟があったからこそやり通せたという。
徹さんは裕美さんと一緒に庭づくりの仕事をしようと決心し、20年勤めた会社を退職する。多くを語らない徹さんの表情からは、その時の深く静かな覚悟が伺える。
「職人さんの後について手伝いながらひとつひとつ学んできました。一日中、土いじり、レンガ造り、コンクリート塗りの日々でしたね」少しづつ積み重ねて修業し、ようやく今の自分がいると穏やかに笑う。
「今までは、実を成らすことに精一杯の日々でした。これからは根っこを張らし栄養をゆきわたらせていきたいですね」
口にするような目標ではなく、これからも小さな事を積み重ねていければいい、二人はそう語ってくれた。kマーク

ガーデンデザイン森の風(事務所)
郡山市亀田1丁目22-22
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