047小川芳江さん
小川芳江さん

小川芳江さん。香りを持っている植物は魅力的だという。「一番好きなのは母の匂いです」

精油

精油を使って自分だけのクリームや香水を作りましょう。

本

大切な本。「デレク・ジャーマンの庭」芳江さんがいつか訪れてみたいというあこがれの庭。

香りを感じる

「身内やペットの死に、香りを感じなくなることもあります」悲しみから解放されるとき、香りを感じるという。

マダガスカル

「昨年の9月にアロマテラピーの研修でマダガスカルへ行ってきました」マダガスカルは若い頃からのあこがれの地。やっと会えたバオバブの樹を背にニッコリ。

イラスト

芳江さんオリジナルのイラスト。
ほうきにまたがって飛ぶのは芳江さん?

小川芳江さん アロマ・トレーナー

アロマレッスン
ハンドクリームをつくりましょう

初めてアロマレッスンを受けた。講師はアロマ・トレーナーの小川芳江さん。アロマテラピーの基礎的なことを中心に、香りは心身にどのように作用するか、精油について話を聞く。ゼラニウム、ラベンダー、ティトゥリー、イランイラン、ロックローズ。それらの精油をテスター紙に含ませ、ひとつひとつの匂いを感じていく。その香りから受ける色をイメージし、心に浮かんだことを文字に表現していく。
はじめはぎこちない感覚も、芳江さんの落ちついた柔らかな声に包まれて、いつのまにかリラックスしていくのがわかる。心の奥にあるかたまりのようなものが、少しづつほどけていくような感覚だ。
「今日は、精油を使ってハンドクリームをつくりましょう」
好きな香りと体質に合った自分だけのオリジナルハンドクリーム。遠い昔、理科室で黙々と試験管を振った記憶がよみがえる。数滴の精油がポタリと落ちる瞬間は、心に何かが響いてくるようだ。
小川芳江さんのレッスンは少人数で行う。芳江さんの柔軟性のある人柄と雰囲気は、人をさり気なく受け入れ不思議な説得力で包みこんでいく。いつのまにか時間が過ぎていた。またいつか同じ空気の中で芳江さんの話を聴きたい、会いに来たい、そう思った。

ばあちゃんと野山を歩いた少女時代

「小さい頃は、おやつは味噌おにぎりでした。野山を歩いてスカンポを口にしたり、アケビや桑の実も食べました。ばあちゃんと山野草を採りに行くのが楽しみだったり、一日中虫と遊んでいるような、ちょっと変な子でしたね。一人でいるのが好きで山で遊んだり、夜に月見草が咲くところを見にいったり。あそこにはどんな草木があって、どういう花が咲くかとか、あの葉っぱは苦いとか毒だとか甘いとか、大体は知っていた。ばあちゃんにもいろんなことを教えてもらいました」
山歩きや土いじりが好きで植物を身近に感じていた少女時代が今の自分のベースになっているのかもしれない、と芳江さんはいう。
「香りは、むしろ苦手でした。香水も身につけることがなかった」という芳江さんが香りと出会ったのは、以前ハーブガーデンで仕事をしていた時だという。当時、オープンスタッフとして農園部に所属し、まもなくショップを任される。ハーブのことや精油、アロマテラピーについて勉強するうちに、少しづつ香りの力を体感するようになっていく。次第に身体や精神の本能的な部分に働きかける精油の力に惹かれていった。それでもアロマテラピーの仕事は、心のどこかに「はやりのことをやっている」といううしろめたさのようなものがあった。そんな時期に仕事でフランスへ渡った。
「日程の半分は、プロバンスの山で精油を抽出するためのハーブを育てている農家の方々を訪ねました。その暮らしぶりがとてもシンプルで素朴なこと、誇りを持ってハーブを育てていることに心を打たれました。残りの半分は、アロマテラピーの第一人者であるボドゥー博士の薬局のあるベルギーで、アロマテラピーについての質疑応答をしました。この時、精油についての科学的な研究が本格的にされていることを知り、驚きました」
その時の教えや思いはやがて、自分が取り組んでいることへの自信と希望につながっていく。

香りは目には見えない
香りはあいまいなもの

「アロマテラピーとは、直訳すると芳香療法といいます。香りは目には見えない、香りはあいまいなもの。そこが気に入っています」と芳江さんはいう。
「100%香りが効く事はないと思う。精油の成分が直接作用して病気が治ることがあるかもしれないけれど、精油の力によって眠っている力を引き出すことも大切だと思う。私はそのお手伝いができればうれしい。そこから先は本人次第で基本的には自分でしか治せない。治してあげましょうという姿勢は傲慢なことだと思います」
効くのか効かないのか、白か黒か、はっきりさせたい人が多い。けれどそんな単純な世界ではないという。
病気を悪いことだとはとらえていない。
「上にのぼっていくのが良くて、下がることが良くない、ということではない。向上心ばかりだと疲れてしまうんですね。年をとるに従ってどっちでもいい、どちらもいい、あるがままでいい。そう考えるようになってきました」物欲はあまりない。悪くいえばなんでもいい。それが自分の生き方だと芳江さんは笑う。
「初対面の人は、ほとんどが緊張している。香りをかいでいるうちに心を開いていくのがわかりますね。表情が変わり、泣き出したりする人もいます」
香りは、精神の深いところに到達し、魂に思わぬ働きかけをする。15年以上やってきて実感していることだという。
「精油は、たくさんの植物から少量しか抽出できません。また世界中のたくさんの人の力で抽出されています」
そういうことを忘れないでこれからも貴重な一滴を大切に使っていきたいと穏やかに話してくれた。kマーク

小川芳江(アロマ・トレーナー)
NARDアロマテラピー協会認定
baobab主宰
アロマ・アドバイザーコース
アロマ・インストラクターコース

小川芳江さんは2015年夏、亡くなられました。