coffee kan
ようこそ珈琲館へ
開店15分前の珈琲館は、どこか神聖な空気を感じる。
風の通るテラスと木の床は清潔に掃き清められ、足を踏み入れると靴音がやわらかく響く。開店前のあわたただしさはない。やがて灯がともされゆるやかな光が壁やテーブル、床などをやわらかく包みこんでいく。
音楽が低く流れ、焼きたてのパンの香りが漂い、心地よく整えられたテーブルと椅子たちが今日のお客さまを静かに待つ。
「いらっしゃいませ、お好きなお席へどうぞ」
スタッフが今日いちばんめのお客さまをていねいに迎える。二人の女性客は迷うことなくテラス席を選んだ。
やがてテーブル席はそれぞれのお客さまで埋まり、おだやかな活気に包まれていく。
街が好き。街の中のオアシスでありたい。
珈琲館の魅力は、居心地のいい空間と自家焙煎コーヒー。手作りのスイーツやお料理も美味しい。店主の矢葺宏さんは、開店時間に合わせ毎朝パンを焼くという。
「ホッとひと息つきたい時や友だちと過ごす時、そこにおいしいものがあればしあわせでしょ」
奥さまの由紀恵さんが微笑みながらいう。やさしい笑顔で人の目をしっかりと見つめて話すステキな女性だ。
「自分は、田舎が苦手なのです」と矢葺さんは笑う。
「街の中で育ったせいかな。田舎の夜は暗くてシーンとしているでしょ。暗いのが怖いわけではないんですよ。灯の下には、たくさんの人がいるでしょ。明かりを目指して人のぬくもり、人のいる方へと心が動きます。スキー場のナイターの灯やローソクの炎にも誘われますね」
珈琲館は今年で36年目になる。街の真ん中のオアシスのような店をつくることが夢だという。
「緑があって人が集まって、コーヒーとデザートでまったりと過ごせる避暑地のような所をね」
そう嬉しそうに話す矢葺さんを由紀恵さんが優しい顔で見守る。
娘が生まれて。母親への感謝。
おふたりには、もうすぐ3歳になる女のお子さんがいる。
名まえは「萌楓(もか)」ちゃん。「コーヒーのモカから名付けました」矢葺さんが嬉しそうに教えてくれた。
「子どもが産まれても、何も変わらずにやっていけると思ってました。子どもはかってに育つもんだと楽観してたのです」
ところがそうではなかったと由紀恵さんは笑う。
ずっと自分がやってきた仕事は、人まかせにしたくない。自分でやりたい。変えられない。由紀恵さんの強く深い仕事への思い。
育児に悩む由紀恵さんに手を差し伸べたのは、お母さまだった。
「実家の母が、電車で通ってくれたのです。朝から夜までほぼ毎日でした。母のおかげで以前と何も変えることなく仕事を続けることができました。親はありがたいですね。感謝しています」
産まれてからずっと母乳で育ったという萌楓ちゃんは、元気いっぱい。2ヶ月ほど前から保育所へ通いはじめたという。
「母が数ヶ月前に体調を崩してしまって。それでも時々は来てくれるんですよ。最近は、ほぼ毎日かな。今日も夕方頃に来る予定なんですよ」
萌楓ちゃんも、おばあちゃんと遊ぶのを楽しみにしているという。
我が子への思い
保育所へは毎朝、親子3人で歩いていく。
「往復35分の距離ですが、車はなるべく使わない。親子で歩きながら、話をしたり歌をうたったりして行くのが楽しいですね」
歌が大好きだという萌楓ちゃん。
「2歳の誕生日には、東京音頭を歌ってましたね」とお父さんが笑う。
最近は自分で歌をつくって嬉しそうに歌っている姿を見かけるという。
「お父さんは、娘を怒りませんね。子どもに感情をぶつけない」とお母さんは言う。
「そうですね、失敗しても、ダイジョーブだよーって言い続けてます。失敗をダメなことだとは思ってほしくない。それと何かが起きた時に、人のせいにしない人間になってほしいですね。最近は、人にやさしくしてもらいたいなら、自分も人にやさしくしてやらないとダメだよーって言ってます」
娘がいるから仕事をがんばれる、と二人は話してくれた。
さて、抱っこが大好きな萌楓ちゃんは最近お母さんにこう言ったのだそうです。
「もーちゃんは抱っこが好き。でもまだ2歳だもん。3歳になったら、抱っこもやめる。オムツもとる」
2009年10月17日、萌楓ちゃんは3歳になります。

coffee kan
郡山市駅前2-8-19 珈琲館ハウス
TEL024-924-0004
営業時間/AM11:00~PM7:00
定休日 /月曜日
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