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竹問屋 平出吉平商店

創業400年。竹串や袖垣を扱う、竹問屋。店先で感じた「伝えたい」という、会津の息づかい。

フクロウ

今では珍しい竹で作った椅子。
竹皮細工の「フクロウ」(大900円)や「招き猫」(1,300円)など、お土産にも最適。

花器

竹細工師の手による花器。価格は10,000円~と決して安くはないが、それだけの見事な細工。
竹の花器(1,000円)竹弁当箱(1,000円)など買いやすい価格のものも揃う。

竹

建物の横には、竹がずらりと並べてある。
奥の庭にある柿の実が色づきはじめていた。

店先に並べられた竹竿。
風に揺れる暖簾に心惹かれて。

桂林寺通りの無料駐車場に車を停め、七日町に向かう途すがら。「竹問屋」と描かれた暖簾が風に揺れているのを目にした。中を伺うと、土間に竹のテーブルと椅子が置かれ、上がりは懐かしい板張りになっている。壁には袖垣や大きなざるが飾ってあった。人の姿はないが、土間の柱に「ご用の方は押してください」と記されたインターフォンがあった。押してみると、奥からいらえがあって、やがて、若奥さんらしい女性が姿を現した。

「うちは竹の問屋なんですよ。昔は業務用の竹串や庭の目隠しに使う袖垣なんかの注文を受けていたらしいですけど…」
創業400年。この地に店を構えて150年。現在の店主はご主人のお父さんで、16代目になるという。
「今も竹串は義父がつくっているんですよ」
そう言われて、店の右手を見ると、会津の郷土料理の田楽や魚の塩焼きに使う大小様々な竹串が並べてあった。しかし、最近はその発注も減り、観光客向けの竹細工や竹皮細工も置いているという。花器やざる、竹皮細工の招き猫などが主だが、水鉄砲や竹の弁当箱など懐かしい品もある。竹の弁当箱を手にとって眺めてみる。昔はみな、これにおにぎりをつめて、行楽や運動会に出かけたものだが、今では台所から姿を消してしまった。
「京都の竹細工師の方がつくった品もあります。竹がお好きな方が良くお買い求めに来られます」と奥さんが見せてくれたのは、一目で職人の手によるものと分かる、見事な細工の花器だった。細く裂いた竹の1本1本がきっちりと編み込まれ、底や縁の処理も繊細だ。良い竹を使ったものは、使い込めば使い込むほど竹の艶が増し、飴色に変化し、独特の風合いを持つという。価格は決して安くはないが、それだけの価値を持つ品であることが分かる。

子どもへ、孫へ。
伝統を「伝えたい」という心。

今の時期は竹細工しか置いていないが、張子人形の「会津の天神様」や桃の節句、端午の節句の人形、鯉のぼり、お正月の羽子板・破魔弓・門松なども扱っている。現在も、「孫に昔からの風習や伝統を伝えたい」というお年寄りが、節句の人形や鯉のぼりを買い求めに来るという。
狭いマンションやアパートの部屋に節句の人形や鯉のぼりを飾るスペースはない。コンビニの発達で、竹の弁当箱に手づくりのおにぎりをつめる母親は少なくなってしまった。
しかし、会津には昔からの「モノ」があり、それを伝えようとする人がいる。「会津」という街全体に「伝えたい」という心が息づいている。
小さな竹問屋の店先で、ふと、そんな息づかいを感じた。

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竹問屋 平出吉平商店

会津若松市日新町14-29
TEL(0242)27-0068
営業時間/AM8:00~PM6:00
定休日/お盆・年末年始
(店内に人が不在の場合は、インターフォンを押してください)