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会津壹番館

野口英世が青春時代を過ごした医院跡で、香り高い自家焙煎コーヒーを。

フクロウ

明治時代からの面影を残す室内。オーナーの照島氏が、この洋館を借りて喫茶店をはじめたのは、昭和51年。それから10年以上の年月をかけて、思い通りに改築したという。

花器

香り高い自家焙煎コーヒー(400円)英世とメリー夫人を描いたマグカップもかわいらしい。メキシコ・ペルー・ブラジルなど、英世ゆかりの国のコーヒー豆や珍しい「インカコーラ」(550円)、地元産のフルーツを使った「地ドリンク」(550円)も。

竹

黒く塗られた重厚な店構え。1階が「会津壹番館」。2階が「野口英世青春館」になっている。ドアの前に、自家焙煎の豆が無造作に置かれていた。

アンティークな洋館の扉を開くと、
琥珀色の空間が迎えてくれる。

少し軋んだ音を立てて、扉が開く。迎えてくれるのは琥珀色の空間だ。大きな西洋風の窓。黒く塗られた天井の梁。煤けた白い漆喰の壁。年月を過ぎた木は磨き込まれ、黒い光を放つ。アンティークなデザインのランプが、黄色みを帯びた光を店内に投げかけている。
「会津壹番館」。会津に来ると、何故ここに来たくなるのだろう。
テーブルの1つに座って、自家焙煎コーヒーを注文する。煙草を取り出し火を点けて、大きく煙を吐き出す。真鍮の灰皿には、懐かしい「桃印」のマッチが添えられている。その愛嬌のあるデザインに思わず微笑み返したくなる。
自家焙煎コーヒーの香りが琥珀色の空間にたちこめ、程なくコーヒーが運ばれてきた。椅子の背に身体をあずけて、香りと豊かな風味をゆっくりと味わう。カウンターで女性が大きなシフォンケーキを切り分けているのを見て、急に甘い物が欲しくなった。思ったより歩き疲れているのかもしれない。そう思ってシフォンケーキを追加した。
近くのテーブルで地元の人らしい女性の二人連れが話をしている。奥のフロアには、一人で来ているらしい男性の姿が見える。観光客も地元の人も、ふらりと訪れた人も、琥珀色の空間でそれぞれの時間を過ごしている。

明治時代、この街に生きた多感な青年がいた。

「会津壹番館」は明治時代に建てられた「開陽医院」という医院跡を改築したものだ。明治時代2階には、若き日の野口英世が3年間下宿していたという。現在2階は「野口英世青春館」として、一般に公開されており、若き日の英世が使った机や書棚、資料などが展示されている。
窓から「会津壹番館」がある野口英世青春通りを見おろす。道には煉瓦が敷き詰められ、明治時代の香りがそこはかとなく漂う。近くには青年時代の英世の初恋の人・山内ヨネの家もある。
多感な時期をここで過ごした英世は、通りかかるヨネの姿をこの窓から見守っていたのかもしれない。夕闇が迫る室内で、ふと、思い詰めた表情で窓辺に佇む英世の姿を見たような気がした。 野口英世青春通り。その名が示すように、この通りは、英世の青春のシーンを幾つも記憶しているのだろう。歓びの瞬間も、涙した日々も、青春の苦悩も…。
「会津壹番館」だけでなく、隣の「福西本店」や向かい側の「大善屋」など、野口英世青春通りには、次第に明治時代の面影を残す建物が復元されてきた。「会津壹番館」でコーヒーを楽しんだあとは、明治の会津に生きた多感な青年の足跡を追って、通りをそぞろ歩いてみてはいかがだろう。

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会津壹番館

会津若松市中町4-18
TEL(0242)27-3750
営業時間/AM8:00~PM8:00
定休日/無休
野口英世青春館入場料/100円