このサイトは2001年〜2007年に取材、掲載したものです。現在の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

きよ彦 花

西会津の清冽な水を感じるそば。野山の香りただよう天ぷら。
教え子がプロデュースした店で、元教師夫妻は第二の人生を歩みはじめた。

十割そば

西会津産のそば粉だけを使って打った十割そば。色が白いのは、そばの実の中心部分だけを使っているから。
天ざる 950円(大盛りプラス200円)

食器

桜をモダンに描いた食器類はきよ彦さんのデザイン。
「昔から桜が好きで、夜明けの桜が一番きれいだなんて高校生の頃から言ってたのよね」と奥さん。

南蛮めし

そばと並ぶ人気メニュー・南蛮めし。
ピリ辛の風味はそばにも合う。
南蛮めし 350円(そばとのセット300円)

店内

農家の土蔵を思わせる店内。
クリーム色に塗られた壁や会津漆器を使った黒い扉が印象的。
会津漆器を扱う坂本これくしょんの社長がデザイン。

心の中にひろがる西会津の風景。

春が訪れると、村落のどこからか雪どけの音が聴こえてくる。空気に土の香りと緑の香りが満ちる。冬が長いから、季節の変化が身近に感じられる。
西会津はそんな小さな村だ。
「きよ彦 花」のそばは、西会津の水の味がする。天ぷらからは、西会津の野山の香りがする。

「きよ彦 花」で料理をつくるのは元教師の渡辺夫妻。そばを打ってゆでるのはご主人、接客と天ぷらを揚げるのは奥さんの役割だ。
「天ざる」を注文すると、間もなく山盛りの天ぷらが出てきた。間を置かずゆでたてのそばも出てくる。長年連れ添った夫婦ならではのタイミングだ。
つなぎを一切使わず、西会津産のそば粉だけでつくる「十割そば」はコシが強く、香り高い。
「そばは打ちたてが一番だからね」と語るご主人は、できるだけ打ちたてに近いものを出すために、一度にそばを打たず、少しずつ打っているという。
味わい、歯ざわり、のどごし。どれをとっても「清冽さ」を感じるのは、ふたりが西会津に住んでいるとうかがったからだろうか。
山盛りの天ぷらはサラッとした食感で、いくら食べても飽きない。衣はなるべく薄く、良質な油を使い、短時間で揚げるという。
「もう少し後なら山菜を出せたんだけど」と奥さんは少し残念そうだ。
ふきのとう、よもぎ、たらのめ…。山菜が顔を出すと、店に来る前に摘んで来て、天ぷらにする。夏は自宅で栽培した野菜、秋はきのこ、冬は根菜が素材だ。どれも身近にある食材ばかりだ。
5月後半から6月後半にかけては藤の花、6月頃にはアカシアの天ぷらが登場する。
「アカシアはともかく、藤の花はなかなかメニューに加えてもらえなくて。1年たってようやく認めてもらえたの」
チラリと隣のご主人に目をやりながら、奥さんが言う。

店のプロデュースをした着物デザイナーのきよ彦さんは、奥さんの教え子だ。
「きよ彦くんが会津の街おこしに関わっているときに『先生、店やってくれ』って頼みこまれて」
本当は定年退職したら、ふたりで悠々自適な老後を送るはずだった。でも、今は楽しんでやっている。毎日いろいろなお客さんと出会う。街の人達ともすっかり顔なじみになった。
きよ彦さんは店だけでなく、ふたりの第二の人生もプロデュースしたのかもしれない。
店内には、きよ彦さんを特集した雑誌が置いてある。きっと奥さんは何回もこの雑誌をめくったのだろう。表紙は手ずれでボロボロになり、腕を組んだきよ彦さんの顔を見えなくなっている。
そのインタビューの中で、きよ彦さんはこう語っている。
「僕のデザインの中には、いつも西会津の自然がある」

map

きよ彦 花

会津若松市七日町2-41
TEL(0242)24-5821
営業時間/AM11:00~PM3:00
定休日/水曜
主なメニュー
●ざるそば 650円
●かけそば 750円
●ブレンド 400円
●地酒 600円~