このサイトは2001年〜2007年に取材、掲載したものです。現在の情報と異なる場合がありますのでご了承ください。

鈴木誠一郎さん/米田基修さん

▲鈴木誠一郎さん(向かって右側)と店長の米田基修さん

手

▲職人の手。
この手が伝統を守り育て伝えていく。

楽椀

▲「楽椀」5つの入れこになっている。
鈴木さん、26歳の時の作品。

ピッチャー

▲「すずめのくちばし」ミルクピッチャー。6,300円。はちみつやミルクを入れてどうぞ。

作業

▲へらさび作業をする長谷川さん。
「父の代からずっと続けている方です。手で研ぐのが磨くこと。機械で研ぐのはけずること」限りなくやりなおす根性がものをいう。

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漆器工房 鈴武

会津若松市門田町一ノ堰 会津漆器工業団地
TEL0242-27-9426 FAX0242-27-4696
営業時間/8:00〜17:00
休業日/年中無休
http://www.suzutake.net/

500年の歴史をもつ会津塗り

「会津漆器は幾年も乾かした厳選された材料をその用途に合わせて使う。職人たちの手により何度となく塗っては研ぎ、また塗っては研ぐ。上塗りには、会津塗り独特の花塗りという技法を用い、 丈夫でふくよかな丸みのある仕上げになる。 会津若松市内で唯一の工場と工房を持つ鈴武では、漆器の工房見学と蒔絵の絵付け体験ができる。

天然木に漆を塗ったものを漆器と思っています

漆器工房鈴武社長、鈴木誠一郎さんに話を伺った。
「家業を継ぎ、会津塗りの伝統を継承し、使いやすく美しい漆器の開発に努めています。オリジナルティの高い器を作っていきたい」
鈴木さんは、会津の魅力の中での漆器でないといけないという。
「会津の土俵を紹介したい。そうでないとドラマがないでしょう。会津の歴史と良さを多くの人に広めたいですね。その上で職人たちの思いのこもったものを手にとってもらいたい」そう鈴木さんは言う。
「私には、金(きん)を使えばいいという価値観はない。漆器は本来はローカルなもの。毎日の生活につかっていただくものです」
漆器は、丈夫で安全性が高く、なによりも修繕がきく。塗り返しはもちろんのこと、割れてしまった器や皿を新品同様に再生することが出来るという。「もちろん、天然木のものに限ります。木の名前のあるものですね。それに漆を塗ったものを漆器と思っています」

私と触れ合うことで漆器に興味を持っていただきたい

鈴木さんは年に数回、東京や大阪、神戸方面に制作実演販売に出かける。お客さんとのコミュニケーションはもちろん、輪島塗や越前塗の職人さんたちとも交流できる貴重な場だ。
「それぞれに良さと欠点があります。欠点が人間らしさで、もう少しこうだったら、という部分を手に取った方が認めて使っていただく。私と触れ合うことで漆器に興味を持ち、気に入った作家のものを使っていただきたい。あわよくば、私のものを気に入って使ってもらえたらこんな嬉しいことはない」熱心に話す鈴木さんの顔がほころんだ

近くの山を散歩してイメージを生み出す

「朝と夕方に、犬を連れて山を歩きます。その中でイメージがわく。私の出す緑や赤、黒は自然の中ではぐくまれたものです。山の中にいると生かされていると感じます」
意地を張っていたり、迷ったりした時にも山に入るという。「朝は空気がしまっている。木の葉の朝露には生命力を感じます。夕方は空気が乾いている。落ち着いた心で一日を終えることができますね」
子供の頃は、新しがりで化学が好き。ニックネームは「ばかせ」。「無口でしたね。聞けば答えるが自分から話すことはしない変わり者でした」と笑った。
「山歩きは今はもう亡くなった父と子どもの頃からよくしました。父は大正生まれの頑固者。人の面倒見が良く優秀な職人を育てました。母は九州の博多生まれで疎開先で父と知り合いました。肝っ玉の太い、おかみさん気質の人でしたね」優しい目で両親を語る鈴木さんの顔に、お会いしたこともないお母さんの面影が見えるような気がした